人間・環境学会誌 第9号 (1998) pp.11-pp.17

公園の利用実態に関する研究

Study on the actual use of parks

幼稚園児の保護者に対するアンケート調査

Questionnaire survey to parents of kindergartner

土田 義郎

Yoshio Tsuchida


 都市公園には、子どもの遊び場としての機能、災害時の避難・安全確保、自然環境の保全機能などいくつかの役割がある。ここでは特に就学前の幼児の公園利用実態を概観し、さらに保護者の公園に対する要望や評価を知ることが目的である。質問票を幼稚園に預け、園児の保護者に配布・回収するという手法によって調査が行われた。その結果、過半数の幼児にとって日常的によく利用している公園の数は2ヶ所以内であり、公園以外の自宅周辺の路上空間も日常的な幼児の遊び場になっていることが明らかにされた。また、空間的整備、遊具、設備、安全に対する保護者の要望はかなり高いことが明らかにされた。

キーワード:公園、都市環境、遊び場、環境意識

City parks play different roles for a city. The roles are to function as a playground for children, to function as a refuge area, to maintain the natural environment and so on. In this paper, the actual utilization rate of parks by pre-school children and their parents' awareness of city parks are examined. Questionnaires were distributed to and collected from kindergarten students' parents. The results are as follows. In almost all cases, the number of parks used is not more than two. Besides playing at home, most pre-schoolchildren use a park or a street near one's home as a playground. Discontent is considerably strong towards the lack of space, equipment, accommodation and safety.

key words : park, urban environment, playground, environmental consciousness

1 はじめに
1.1 公園をめぐる問題の背景
 都市公園法に基づき、国や地方公共団体などによって数多くの公園がつくられている。その役割としては、子どもの遊び場、災害時の避難地・避難路などの防災拠点、地域住民の健康維持のための運動施設、都市に潤いを与える貴重な緑地、歴史・文化的資産の保全、などさまざまな昨日が考えられる。地域環境の快適性への影響は大きいものと考えられており、地方自治体などで、毎年かなりの額が公園の整備に費やされている。本研究は、数ある公園の機能のうち、遊び環境としての公園に着目した。

1.2 既往の研究
 小学生の遊び場の利用圏域については、青木(1988)による調査報告がある。また、河野ら(1987)は、児童の外遊び圏域は町会圏を基本単位として推定できるとした。五十嵐ら(1983)は、公園の構成要因について小学生に対する聞き取りの結果を数量化T類によって分析し、公園規模・遊戯施設の充実度・植栽が公園の評価に深くかかわっているとした。
 その他、公園数や誘致距離について量的立場から考察したものは多い。しかし、実際の公園では量・距離だけが問題なのではない。もっと質的な側面について、どのような公園が望まれているのか、いったい何が問題なのかといったことについて考察されるべきである。
 また既往の研究のほとんどは小学生を対象としている。児童公園の利用者は小学生だけではない。「公園デビュー」などという言葉があるように、就学以前から公園は使用されている。子どもの年齢によって同じ公園でも小学生とは評価の観点が違ってくるだろう。
 公園のデザインの具体的な手法についても多くの知見がある。住民参加型の整備(日本建築学会、1997)や、特色を持たせた公園づくり(まちづくりイベント研究会、1996)が行われるようになってきている。しかし、整備手法の裏付けとなる定量的な検討はされていない。

1.3 研究目的
 公園をつくる側は住民によく使われることを目指し、公園を使う住民側もよりよく整備されることを望んでいる。しかしながら、理想的に整備された公園はごく一部である。大半の公園の状況は理想的な状態であるとはとてもいえない。
 筆者は本研究の予備調査で金沢市内の児童公園、近隣公園、運動公園、緑地などすべての住区基幹公園518ヶ所を実地調査した注1。その結果、あまり利用されていないとみられる公園がかなり多いことを確認した。
 公園の利用度を高めるためには子供の遊び方の基礎資料を得ることが、公園整備の整備にとって重要な課題である。そこで、既往の研究においては調査対象に取り上げられることの少ない未就学の幼児に着目した。幼児自身に面接したり質問紙を配布したりするような意識調査は困難であると考えられるので、3〜5歳の幼稚園児の保護者を本研究における調査対象とする。幼児にとっての公園の現状と保護者の公園に対する意識をとらえることを直接的な目標として、金沢市域に居住する幼稚園児の保護者を対象にアンケート調査を実施した。

2 調査方法
 アンケートの内容概要を表1に示す。設問2は利用する個々の公園についての評価項目であり、回答した公園の数だけ記入できるようになっている。設問3から10は、現在利用している公園一般についての項目である。11から14はフェイスシート項目である。
 アンケート用紙は、幼稚園に協力を依頼して園児の保護者に配布した。また回収も幼稚園を通じて行った。石川県金沢市内42ヶ所の幼稚園のうち、南部地域を中心とした19ヶ所の幼稚園から協力をいただいた(表2)。
 配布数は全部で1369票であり、そのうち回収できたのは789票であった。回収率が57.6%と多少低くなったのは、回答者に対し直接回収をしていないので回収率を高める手段がとれず限界があったためである。
 この調査の配布・回収作業は、1994年11月上旬から12月中旬にかけて実施した。

>>表1 アンケートの設問の概要
  内容 回答形式
1 平均利用回数 選択
2-1 利用する公園の名称 記述
2-2    〃  の理由 記述
2-3     〃  への要望 記述
2-4    〃  までの時間距離:徒歩 記述
2-5    〃  までの時間距離:自動車 記述
2-6    〃  の評価 広さ,遊具の種類,

          遊具の手入れ,衛生,

          安全,地面の状態
各5段階
3 公園を利用する利点 記述
4 公園を利用する欠点 記述
5 公園を利用する目的 記述
6 利用するときの注意点 記述
7 公園数への意識 選択
8 公園以外の遊び場 記述
9 公園の一般的イメージ 記述
10 公園に対する一般的要望 記述
11 住所 記述
12 保護者の休日 記述
13 家族の年齢 記述
14 家族の職業 記述
設問2-1〜2-6は回答した公園の数だけ反復

>>表2 アンケート票の配布・回収状況
対象幼稚園 金沢市内42ヶ所中19ヶ所
配布数 1369票
最終回収数 789
回収率 57.6%
調査期間 1994年11月 〜 12月

3 結果
3.1 公園の利用状況について
 設問2で回答者が利用する公園として記述された公園の数の分布を図1に示す。平均すると一人当たり2.12ヶ所の公園をあげている。4ヶ所以上あげた回答者も多いが、園児が徒歩で行くことができる範囲にそれほど多くの公園はないはずなので、自動車を利用して行く公園がかなりあることを示唆している。

>>図1 記入された公園の数

 公園の利用頻度(設問1)を図2に示す。週に1回という回答が一番多く、次いで週に何回の利用という回答状況である。一方、利用しないという回答もかなりある。園児が遊ばないということは有り得ない。公園以外のどこで遊んでいるかという設問8に対する結果(図3)をみると、自宅、近所(家の中、周辺道路、駐車場)という回答が圧倒的に多い。
 公園で遊ぶ場合でも行き帰りの道は危険が伴うが、道路や駐車場自体で遊ぶ場合には交通事故の危険性は格段に高くなる。反対に親が家の中にいる場合には、目の届かない公園にいるより、目の届く近所にいた方が犯罪などの危険を回避するにはよいという論理も成り立つ。

>>図2 園児の公園利用頻度


>>図3 公園以外の遊び場

 公園までの所要時間(設問2-4、2-5)を図4、5に示す。アンケートでは実際にその手段によって行くかどうかは問うていない。1つの公園について、徒歩と自動車の両方に記入している回答者もいるため、両者の合計2045ヶ所(1238+807)は、記入された全公園数1663ヶ所より多い。
 徒歩、自動車いずれの場合も5分、10分といった切りのいい値が多くなっている。これは、回答者の申告によるものであり、正確に何分かかるかではなく、感覚的な数値であるためである。
 両者の総数を比較すると徒歩で行くと判断される公園の方が多いが、自動車で行くと判断される公園もかなり多い。自動車の利用は、行動圏における交通機関の発達度の違いが考えられる。大都市圏での自動車保有台数と比べ、石川県など地方都市での保有台数はかなり多い注2。以降の考察においても、この点を踏まえておく必要がある。
 指摘数の分布を較べて両者に共通するのは、10分を超えると指摘数が大幅に減っていることである。このことから、日常的に遊ぶための公園の誘致圏は時間距離にすると10分程度であると推測される。
 また、累積曲線で比較すると、徒歩の場合は90%を超えるのは15分であるが、自動車の場合は20分である。自動車の方がやや長めの時間距離を許容していることがわかる。この原因としては、休日に家族で出かけるような郊外の大規模な公園については、日常的に利用する公園と同じ誘致の時間距離限界は適用されないということが考えられる。たとえ遠くても行くに値する公園も存在していることを示している。

>>図4 公園までの所要時間(徒歩の場合)


>>図5 公園までの所要時間(自動車の場合)

 公園までの所要時間の申告値と設問2の各項目の評価との関連を示したものが図6である。徒歩でも自動車でも、評価が高い公園は遠いという一般的傾向がある。
 公園への移動手段の全体的な傾向の違いは、自動車の方が全体に広さの評価が高くなっている点である。これは、広い公園の存在密度、自動車の速度を考えればほぼ当然の結果といえる。
 また、遊具の種類、清潔さ、地面の手入れといった点で、徒歩で行く公園の方が満足度の評価が低い傾向がみられる。遊具の種類については、予備調査における金沢市内の調査で確認されたことであるが、小規模な児童公園では同じような遊具(滑り台、ブランコ、砂場など)が3、4個あるだけという状況から首肯できる結果である。清潔さについては、猫などの糞で汚染された砂場が近年問題となっていることが反映しているとみられる。地面の手入れについては、北陸地方のように雨が多い地域の場合、地面の水はけも遊び場としての機能に大きく影響することを示しているものと考えられる。

>>図6 公園の評価の分布と公園までの時間距離の関係

3.2 公園の利用理由と要望
 設問2での利用理由と要望は、回答者の記述した内容に複数の要因が混在していた。このためデータ整理の段階で、回答に応じたキーワード(複数可)を付した。各キーワードの出現度数を集計したものが表3である。
 利用理由についてみると、公園利用行動に最も影響する要因は位置的な条件であることがわかる。日常的遊び場としては、やはり自宅から近いことが必要であり、選択の余地が少ない。これは公園の積極的な魅力ではなく、消極的な選択要因である。要望をみると、空間的整備(広さ、水はけ)、遊具・設備の増強が望まれていることがわかる。積極的な選択要因としては、のびのびと走りまわれる広さや、自然環境に触れられるといったような空間的魅力や、遊具の豊富さ・面白さが求められていることがうかがわれる。
 また、安全面、衛生面にも要望が多い。これらの事柄には個人ではなかなか対処できない。しかし、潜在的要望はかなり多いものと思われる。
 今ある公園の有効利用のためには、住民の要望に対して、どのように変えてゆくか、どのように維持するかが問題である。今回の対象となっている公園は、ほとんどが金沢市の管轄である。金沢市では、公園の雑草取りなどの清掃を町内会に委託している。町内会は大体年に1回か2回の清掃の日を設けているが、これで充分ではない。コミュニティのあり方とも深くかかわってくる問題であろう。

>>表3 公園の利用理由と要望について   (上段:理由、下段:要望)
着目要素 度数 内 容 例
位置 1020 近い、○○の近く
12 もっと近くに
空間 806 広い、自然豊富、○○がある
257 もっと広く、水はけを良く
遊具 536 多い、面白い
392 増設、手入れ
294 友達がいる、親子で楽しめる
11 人けがない
動植物 194 昆虫、鳥がいる、緑が多い
172 雑草、毛虫駆除、木が多すぎ
安全 115 車が来ない、目が届く
174 周辺交通、ガラスの除去、変質者
衛生 75 きれい
318 砂場の衛生、犬の糞、ゴミの除去
設備 67 駐車できる
211 休憩所、時計、水道、駐車場
水辺 47 せせらぎで遊べる
-
トイレ 26 きれい、あるから
105 清潔に、明るく、欲しい
習慣 12 良く知っている場所
-
料金 11 貸し自転車・乗り物・駐車場が無料
4 無料化
健康 9 体力増強
-
美観 6 デザインが良い
30 明るい雰囲気に、落書きの消去
5 静か
-
自転車 -
7 自転車の乗り入れ禁止
管理 -
5 修理、未完部分の完成
情報 -
2 催しの情報提供
なし -
80
無回答 133
668
無回答以外は「理由」の頻度順に並べている。

 同一地域内の利用度の低い公園と高い公園を比較し、どのような相違があるのかを検討する。表4に示すのは、半径500m以内に存在する4つの公園の利用理由と要望を集計したものである。Aはバラ園と芝生広場に隣接しており、アスレチックと一体化した複合遊具に特徴がある。競技場に隣接している関係で照明、ベンチ、トイレなどもきれいに整備されている。Bは大きな築山と広場があり、長い滑り台が2つある。そのほかにコンクリート製の滑り台も2つあり、宇宙船のような大きなジャングルジムなどに特徴がある。C、Dは通常の遊具のみである。
 公園1ヶ所当りの利用理由の数を比較すると、A=1.74、B=1.76、C=1.43、D=1.53と差がみられ、CやDの公園での回答された利用理由が少ないことがわかる。  これらの公園を利用する理由についてのアンケートの回答から特徴をあげると、「広い」「近い」「遊具が豊富」は4ヶ所の公園すべてで共通であった。Aでは「バラ園がある」「清潔」といった保護者にとっての魅力が大きいと考えられる。Bは「人がたくさんいる」「子どもが喜ぶ」のように子ども自身の選択の結果とみられる回答が多い。一方、CとDでは、「近い」という消極的な選択による回答が多いことがわかった。
 実は、これら4つの公園の近くには他にも多くの公園がある。しかし、それらはアンケートの回答には利用する公園として表れていない。このような公園の状況について、予備調査の結果と照らし合わせたところ、住宅地などの一角に遊具(ブランコ、滑り台、砂場)などが数個設置されているだけで、かなり荒れた状態であるということが確認された。

>>表4 利用理由と要望:同一地区内4ヶ所の公園の比較:同一地区内の4つの公園の比較
公 園
利用する公園としての指摘数 144 132 14 13
理由 広い 74 37 6 2
遊具が豊富 53 134 4 2
近い 47 28 6 7
バラ園がある 33 0 0 0
清潔 29 0 0 0
自然が多い 14 0 2 0
人が多い 0 20 0 0
子どもが喜ぶ 0 8 0 0
買い物のついで 0 5 0 0
自転車にのれる 0 0 0 2
その他 0 0 2 1
遊具の増設 23 11 1 8
要望 遊具の修理 0 15 0 0
清掃 18 6 4 1
ペットの進入禁止 10 0 0 0
駐車場の確保 18 11 0 0
トイレの清掃 4 24 0 0
砂場の衛生 0 13 1 0
その他 0 0 3 5
理由、要望は一つの公園について自由回答としているので合計は指摘数とは一致していない

4 まとめ
 本報は、幼稚園児の公園利用行動について、保護者へのアンケート結果を全体的に分析したものである。その結果、日常的によく利用している公園の数は2か所以内である場合が過半数を占め、公園以外の自宅周辺の路上空間も日常的な幼児の遊び場になっていることが明らかにされた。また、空間的整備、遊具、設備、安全に対する保護者の要望はかなり高いことが明らかにされた。
 公園が自宅から近いということは、公園利用行動が表れるための消極的な要因である。それに対して積極的な要因は、遊具の豊富さ・面白さ、のびのびと走りまわれる広さ、自然の豊富さ、清潔な設備、といった付加的魅力であることが判明した。魅力のある公園というのは人が集まってくる。すると、友達がいるのでよく行くようになる。反対に、使われない公園はというのは使われないために施設などが荒れたままになる。そのような公園は魅力がないのでますます使われなくなるという循環を生み出している。
 児童公園などは誘致距離を配慮して配置しているため、概ね半径250m以内に1つは存在するはずである。しかし、アンケート結果では公園以外の自宅周辺の道路などで遊ぶとしている回答も多い。通過道路交通などの面で安全であるとはいえないが、道路での遊びを完全には否定できない。遊びと都市機能の共存に関する議論は今後の課題である。
 また、同じ幼稚園児といっても、年少と年長では身体的、精神的にかなり相違がみられる。園児の年齢、家族の属性の違いなどに着目した分析も今後の課題としたい。場合によっては実際のフィールドでの観察からの分析も必要であろう。

謝辞
 本調査の実施においては村山純一氏、松永武士氏、谷章氏、林泰孝氏(当時金沢工大卒研生)の協力が不可欠でした。また、アンケートにご協力いただいた各幼稚園の関係者各位、実際に回答いただいた方々に対し、深く感謝いたします。

脚注
注1 所在地、設備、遊具について調査し、Windows上のデータベースソフトParadox (Boland社)をプラットフォームに、専用のオブジェクト指向言語Object PALによってデータベースを開発した。現在はこれを元に、Internet上で金沢市近郊の公園の検索が簡便にできるようにHTML化したものを公開している。URLはhttp://www.kanazawa-it.ac.jp/より研究室のページ経由でリンクしている。

注2 石川県の乗用車保有台数は、1994年現在で100世帯当たり124.9台であり、全国11位に相当する(県勢、1996)。ちなみに大阪は71.1台、東京は59.3台である。

参考文献
青木恭介(1988)児童公園の利用圏域の変動、日本建築学会計画系論文報告集、No.392、pp. 114-125
五十嵐芳樹(1983)児童公園の構成要素と利用者の評価との関連、造園雑誌、pp. 87-92
国勢社編(1996)データで見る県勢、国勢社、p. 306
河野泰治、北岡敏郎(1987)幼児、児童公園の配置計画について:計画単位と利用形態分析、日本都市計画学会学術研究論文集、No.22、pp. 265-270
まちづくりイベント研究会(1996)まちづくりイベントハンドブック、学芸出版社、pp. 62-63
日本建築学会編(1997)人間-環境系のデザイン、彰国社、pp. 208-231

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